【視察報告】藤岡バイオマス発電所視察記録

株式会社アーブが経営する藤岡バイオマス発電所は、藤岡インターから車で10分ほどの国道沿いに位置しています。この発電所は、2016年5月に発電を開始。日本ではまだ例の少ない、SVO(Straight Vegetable Oil)による発電所です。

藤岡バイオマス発電所

発電機は、ヤンマー製ディーゼル発電機EP-160、出力は145kWh。毎日約1tのSVOを使用し、年間約125万kWh(1.25TWh)の電力を生みだしています。これは、一般的な家庭約400軒分の電力使用量に匹敵します。 発電機が発する騒音は、大型トラックのアイドリング程度といいます。そうした騒音が、気にならない立地が必要です。藤岡バイオマス発電所の立地としては、幹線道路沿い、裏手は水田、両脇は空き地。市街化調整区域の約300坪の敷地。


気になる騒音レベルは?

訪れた際の騒音は大型トラックのアイドリング程度以上でした。それは、外気が30度を超え、エンジン内部の温度も500度を超えるという状況で、発電機の扉のひとつが開放されていたからでした。閉めると、騒音レベルはかなり下がります。 騒音対策として、道路側には、遮音壁を設置。道路側に回ってみると、騒音は自動車の走行音に紛れています。発電機の扉が開け放たれている状況では、付近で話しをする際には大声にならざるを得ない状況。扉を閉じれば、通常の会話が可能なレベルに。騒音に関する苦情はこれまで一切ないとのことです。

発電機のエンジン内部は500度に達する

発電機は、水冷式。エンジンそのものは500度を超える状態。550度を超えると、いろいろと問題が出てくるといいます。発電効率は、45%程度、コジェネも行えば80%まで効率を上げることができる。このお湯を使って、敷地内でエビの養殖を計画中。初期投資が3千万円必要で、それがネックになっている。コジェネの発電機は高価だが、普通の発電機に熱交換器を自分でつければ安く済むといいます。

SVO

このディーゼルエンジンの燃料になっているのは、冒頭にも書いたSVO。Straight Vegetable Oilとは、文字通り、「植物油そのまんま」。つまり、サラダ油です。しかも使用済み。これを濾過し、不純物や水を取り去った後で、アタッチメントを取り付けたディーゼル発電機に送り込むわけです。アタッチメントの役割は、サラダ油の粘性を弱め、さらさらにすること。ディーゼル油とサラダ油の最大の違いは、常温での粘性。ディーゼル油が、常温でもさらさらしているのに対し、サラダ油は常温ではとろーん、としています。これをフライパンで熱すると次第にさらさらになります。アタッチメントは、この粘性を弱めるために、少しだけ温めて、エンジンに送り込むための装置です。

廃食用油からSVOへ

回収されたサラダ油(廃食用油)には、パン粉のかすや、てんかすなどの他、素材から出た水分が含まれています。これらを除去するのが、SVO発電における最重要ポイントです。藤岡のバイオマス発電所では、5段階にわたって濾過が行われていました。 第一段階が、畳4枚分ほどの広さで、深さ80cmほどのオイル槽の表面を、メッシュ素材の防虫ネットで被ったところに、廃食用油を流し入れます。ここで、大きなかすなどを除去します。さらに、70度程度のお湯を蛇管に通し、油の温度を50度くらいに保ちます。すると、不純物と油の分離が早くなるそうです。上澄みの部分を真空ポンプで、静置用のタンクに送り込みます。真空ポンプなので、含まれている天かすなどを砕かずにそのまま次の静置用タンクに送り込むことができます。オイル槽からタンクへのパイプは地下に埋め込まれています。

高さ3m、直径1メートルほどのタンクに送り込み、どろどろの不純物と水を沈殿させます。水は重く、油は軽いので、時間を置けば水と不純物は下に沈みます。ここで、理想なら24時間、短いときは12時間ほど静置することで、油と水、不純物を分離します。下に溜まった水と不純物は、下部のバルブを開くことで回収。ちなみに、BDFでは、不純物はグリセリンに吸着されるので、ここまでフィルタリングを行うことはないと言います。

そこまで濾した廃食用油を今度は75度に加温して、遠心分離器にかけます。遠心分離器は、ドイツのウエストファリア製(OTC02-02-137)。1分間に6リットルがメーカー推奨値ですが、1分間に4リットルに絞っているといいます。1時間240リットル。ここで、25ミクロン以上の不純物は除去(ワンスルーの場合)。さらに、静置タンクに静置し、これまでに取りきれなかった水分を取ります。ちなみに、除去されたパン粉や天かすをはじめとした不純物は、バイオガスプラントに投入することで、発酵の効率が良くなるとのこと。10tのバイオマスに対して200kg程度を混ぜることで、温度が上がり、発酵が安定するということです。ただし、こうした天かすやパン粉クズなどが含まれるウエスは、自然発火の可能性があるので、水を張ったペール缶に入れて保存、運搬します。絶対にプラ容器などに入れてはダメ、とのこと。 最後に大きなコーヒーフィルターをトイレットペーパーのような厚さに重ねたフィルターを5つ使った濾過器を通して、ヤンマーのエンジンが求めているオーダーである8ミクロン以下の不純物しか含まれないようなきれいな状態にします。このフィルターのいいところは、廃食用油に含まれる塩分や、微細な金属などもここで吸収してくれるところ。ただし、このフィルターが1個6000円で5個セットで使うので3万円かかり、場合によっては1週間で交換しなくてはならない。これが、コストを引き上げているので、これに替わるものを模索中、試行錯誤中。

ここまで濾過の過程は、最初のオイル槽、静置槽、遠心分離器、2番目の静置槽、フィルターと5段階に渡っていますが、不純物の割合は、5パーセント程度。つまり、1日稼働させるための1トンの精製油を作るために、1.05トン程度の廃食用油があれば足りるとのこと。基本的に廃棄物は、バイオガスプラントで利用されるので、廃棄するのはフィルターなどのみ。最初の2段階のタンクは、自家製で、遠心分離器は数百万円単位、ということでした。

廃食用油の回収

近隣のさまざまな市町村から廃食用油は集められます。行政からは5〜6円/リットル、民間の協力団体からは10円/リットルを支払っています。回収ステーションは、合計すると2500程度。ペール缶やペットボトルに詰められたものを、ここで処理。瓶などは危険なので、市町村にそのまま返還。工業用などが含まれた場合も返還するとのこと。

メンテナンスは、自力で

メンテナンスは、ヤンマーに依頼すると、年間400万円も取られるそう。ということで、自力で行っているとのこと。「自分たちの発電所なら、自力でメンテできるようにならないと、人任せではダメ」という発言に、覚悟を新たにしたはちエネメンバーでした。

スタートはBDFだった

市民から廃食用油を集めるプロジェクトの発端はBDFだったといいます。しかし、BDF車はそこまで増えず、廃食用油があまる結果に。しかし、廃食用油を集めるルートは活発に動いており、このままでは廃食用油が余る結果に。そこで窮余の策として始まったのが、この廃食用油発電。 一度廃食用油回収のルートを作ったら、滅多なことではそのルートをなしにすることはできません。始めるからには、それなりの覚悟を持たないと、と思わせられるエピソードでした。

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